30年間で52万人以上の人生を好転してきた世界トップクラスの「心の専門家」である佐藤康行先生の書籍「ダイヤモンド・セルフ」より抜粋してお伝えしています。
以下より、書籍「ダイヤモンド・セルフ」より抜粋記事です。
前回の記事は下記からお読みください。
プラスの心とマイナスの心
私たちの心は大きく二つに分かれます。「プラス」の心と「マイナス」の心です。
プラスは「愛」、マイナスは「恐怖」です。野生動物などはシンプルですから、あらゆる行動の原動力がこの「愛」か「恐怖」です。
たとえば、自分の子どもを愛する気持ちから餌を捕獲したり、外敵が現れた時に恐怖心から身を守ったりするのがよい例です。
私たち人間は、「恐怖心」を克服する努力をしたりしますが、野性の動物はしません。そんなことをしたら、あっという間に天敵に襲われて、絶滅してしまうでしょう。
このように、野生の動物は本能のままに自然な心の反応に従って生きていますが、人間の心はもう少し複雑です。
人間にとって、プラスの心とは、「明るく」「前向きに」「積極的に」「夢を持って」「目標を持って」「プラス思考で」「愛と感謝の気持ちで」「素直な心で」「勇気を持って」といった言葉で表される心です。
また、マイナスの心とは、「暗く」「後ろ向きに」「人を恨んで」「憎んで」「妬んで」「傲慢で」「偏屈で」「マイナス思考で」というように表現される心です。
先ほど、あなたの見ている現実があなたの心の反映であること、そして、この世界には原因と結果の法則が働いていて、あなたの心があなたの現実の原因になっていることを述べましたが、このプラスの心とマイナスの心のどちらが、すばらしい人生をあなたにもたらすでしょうか。
答えは言うまでもなく、「プラスの心」と誰もが答えるでしょう。
だからこそ、世の中にはプラスの心を学ぶ教えやトレーニング法が山ほどあり、氾濫しているのです。
あなたが悩みを抱え、書店の自己啓発書や精神世界書のコーナーに目を向ければ、棚一面の本があなたに優しく、時には力強く、「明るく」「前向きに」「積極的に」「夢を持って」「目標を持って」「プラス思考で」「愛と感謝の気持ちで」「素直な心で」「勇気を持って」といった「プラス思考」を語りかけてきます。
しかし、仮にプラスの心を身に付けようと本を読み漁り、頭に叩き込んでインプットし、定着させるために反復したり、心を落ち着かせたり、自己暗示をかけたりしても、それで本当に心がプラスになり、その心の反映としてあなたが見ている世界が輝き、すばらしい人生を歩めるのでしょうか。
残念ながら、答えはNOです。
そんなことで、その人がすばらしい人生を送れるのであれば、世の中に悩みや問題を抱えた人などいないでしょう。
そして、現在、巷にあふれる既存の手法のほとんどが、このプラスの心を頭にインプットするものなのです。
ここでは、こういった一般的に言われているような、いわゆる「プラス思考を身に付けましょう」といった内容ではありません。
では、なぜプラス思考が定着しないのか、なぜ頭ではわかっていてもできないのか、心の深いところに手を付けるためにも、さらに心の仕組みを見ていきます。
心の構造① 顕在意識「頭」(観念)
ここまで説明してきた「心」とは、心の中でも一番浅い部分のことです。この部分は、「頭(観念)」の部分です。
私たちは「悩まないための心」とか「運をよくするための心構え」といったものは、頭ではすでになんとなく理解しているのです。当然、マイナス思考よりプラス思考がよいということは誰でも知っていますし、愛の心、感謝の心が、幸運となって返ってくるといった知識は、誰からともなく聞いて、頭ではわかっているものです。
・インプットでは書き換えられない心
もし、頭でわかって理解するだけで解決するなら、世界中の大成功者や大富豪、聖者や覚者の本、教材などを買い集めて次々と頭に叩き込めばよいだけです。仮にそのことに何百万円注ぎ込んだとしても、たったそれだけで望みがかなって「最高に運のよい、すばらしい人生」が得られるのであれば安いものです。
しかし、実際はどうでしょうか。どれだけ「プラス思考で生きよう」と努力しても、ふと我に返った時、どうしてもそう思えない心が湧き上がってきてしまうのではないでしょうか。
「感謝しろと言われたって、そう思えないから仕方ないじゃない!」
「プラスに考えろ、なんてわかっちゃいるけど、こんなひどい状況では、どうしたって不安にもなるよ……」
「すべての人を愛せよったって、あいつだけはどうしても許せないし、あいつが悪いんだから、憎むのは当たり前じゃないか!」
ここにプラス思考の限界があります。
プラス思考を身に付けようとインプットする。徹底的に実践すれば、たしかにある程度プラス思考を身に付けることは可能かもしれません。
本を読んだり、誰かに相談したり、どこかに話を聞きにいったり、はたまたセミナーや研修に参加して取り組めば、その直後や調子のよい時は心が晴れることもあるでしょう。
しかし、ふと力を抜いたとき「やはりだめだ」「プラスに思おうとしてもどうしてもそう思えない」といった心が自然に出てきてしまうのです。
よい教えや考えをどれだけ学んでインプットしても、それは心の一番上の部分、「頭(観念)」という頭の思考の中での話です。
大多数の人々は、「頭ではわかっている」のです。しかし、日常の現実に戻ると、思い通りにいかない出来事があれば「やはり自分はだめだ」と思う心が出てきたり、また誰か他人から気に障ることを言われれば、一瞬にして「感謝しよう」という心が吹き飛んで、「どうしてもそう思えない」心が湧き上がってきたりするのです。
・インプットする前に「すでに思っていること」が問題
私たちは、この頭(観念)の部分への徹底的なインプットを、一旦止めなくてはなりません。なぜなら、これは問題解決とは正反対の方法だからです。根本的な解決方法とはやり方がまったく逆なのです。
実は、私たちの心には「思おう」とする前に、「すでに思っている心」があり、深く定着しています。
そして、もともと定着していた心ですから、後から「思おう」としてインプットした心よりも、圧倒的に強いのです。
「思おう」として何度も反復して言い聞かせても、ふと力を抜いたときに、湧き上がってくるもの。それは、この「すでに思っている心」なのです。
では、この「ふと力を抜いた時に湧き上がってくる心」とは何なのでしょうか。「頭で思おうとする前に、すでに思っていた心」とはいったいどこから来るのでしょうか。
心の構造② 潜在意識「業・カルマ」
・意思とは無関係に出てくる記憶
以前の記事で「人間は記憶でできている」と述べました。
過去の嬉しかったこと、悲しかったこと、楽しかったこと、だまされたこと、ほめられたこと、辛かったこと、痛かったことなど、無数の出来事の記憶は、すべてあなたの中に保存されているのです。いわば、細胞に刻み込まれているのです。
このような記憶は、言葉を換えれば「潜在意識」とも呼べます。また、この記憶は昔から宗教などで「業」や「カルマ」と呼ばれてきたものに相当します。
ここでは伝統的に深い意味を込められて使われてきた「業(カルマ)」という言葉を用います。日本語で「あの人は業の深い人だ」と言うことがありますが、その「業」です。
つまり、私たちの心は、地層でたとえるならば、まず「頭」という観念の層があり、その下に「業」という潜在意識の層があるという二層構造になっているのです。
そして、この業の心には、普段は意識されないような過去の膨大な記憶が刻み込まれています。
その記憶は、私たちの外界(心という内界に対し、目に見える外側の世界)に、その記憶が刻み込まれた時に体験したことと似たような状況が現れた時、その刺激によって引き出され、ふと頭に湧き上がってきます。
この反応は、ほとんど自動的に起こります。
つまり、先に話した、ふと湧き上がってくる「すでに思っている心」は、まさにこの業、カルマといった過去の記憶から来るのです。
今、このサイトをあなたが読んでいる瞬間も、この業の記憶が湧き上がってきています。
もし、過去に心理や精神世界についての本を読んで元気づけられたり勇気づけられたりしたことがあれば「この本も元気を与えてくれるだろう」といった思いが湧いてきます。
もし、過去、心について書かれた本を読んで結局だまされたと感じたことがあれば「この本も同じではないか」といった思いが、自動的に湧いてきているはずです。
人によって皆、違う思いが今この瞬間も湧き上がってきています。今、あなたの心にどういう思いが湧いてきているか、見つめてみてください。それがまさに過去の記憶、業によるあなたの反応です。
そして、この記憶は、頭で自覚的に覚えている記憶より格段に力が強いのです。
ですから、業の心に、マイナスの記憶が多ければ、当然そのマイナスの業に支配された心が出来事の捉え方やそれに対する反応に表れてくるわけです。
たとえば、過去に人前で話をして失敗して大恥をかいた記憶が刻まれると、スピーチを頼まれる度にその苦い記憶がよみがえって、また失敗を繰り返す場合があります。
「あがるまい、あがるまい」と自己暗示をかけたところで、過去の体験に伴って心に深く刻み込まれた心の強さにはかないません。
また、たとえば女性が若い頃に父親に強烈な恨みを持つと、一生涯、男性不信になってしまう場合もあります。
このような、過去の忌まわしい体験などの強烈な心の傷を、心理学では「トラウマ(精神的外傷)」といいます。これも業のレベルに刻み込まれた記憶だと理解できるのです。
そして、過去の記憶であるこの業の心が、外界(現実世界)の出来事に対するあなたの反応を決め、あなたの人生を決定しているのです。
だからこそ、この潜在意識である「業」という過去の記憶に手を付けなければ、人生の問題の根本解決は不可能なのです。
次は、「心の仕組み~顕在意識・潜在意識~プラス思考をインプットする限界と弊害」についてお伝えいたします。