どこの業界にもあるかもしれませんが、看護師の業界にも異動というものがあります。内科から小児科や外科などへ。自分で異動先を希望するというよりも、勤務先の病院から言われることがほとんどです。個人の成長のため病院のため、看護師のバランスをとるためだったりと、その理由は多岐にわたります。
子供が好きだから小児科のままが良い……
外科とか絶対無理……
異動するたびに新しい人間関係をきずくのが大変……
新しく異動する先の上司が怖くて有名……
病院というのは、他の人の命に関わる仕事ですが、異動によって自分自身が病んでしまうということも少なくまりません。特に、院内の人間関係というはとても複雑です。今まではなんとか人間関係や信頼が築けていたけど、うまくいかないこともあります。
私自身も看護師として働いていて、何度か異動を経験しました。1度目、2度目は、大変ながらも、次の異動になる時には、良い気持ちで異動をできました。でも、3度目の異動の時に、どうしても乗り越えられない人間関係の問題が発生。
この記事では、3度目の異動時に起きた人間関係の問題、そして、その問題をどうやって乗り越えられたのか、そのそも何が原因で人間関係の問題が起きてしまったのかを書いていきたいと思います。まったく同じ状況ではないと思いますが、似たような状況の人のご参考になればという想いで綴ります。
配属先の人間関係はいつも大変
私が看護師として働き始めて7年目を迎えたときの話です。3度目の異動がありました。
私の配属先の上司は、いつもいつも怖いと有名な方でした。前任の方はいつも心を病んだり、仲たがいして大変なことになったと評判の上司のもとでことごとく働くことになるのです。人間関係が大変な部署にばかりなぜかご縁がある私…と思っていました。そう思っているうちに、「あの人なら意地悪な人がいても辞めずに何とかこなす」と評判になって、そんなところばかり配属されるようになったのです。
でも、最初は意思の疎通がはかれなくても、1年を終える頃には、人間関係や信頼関係ができ、その上司と出会えて良かった!という気持ちでお別れすることができました。信頼や人間関係をうまく築けていたんだと思います。しかし、3回目の異動は様子が違いました。
異動先がわかったとき、正直、「また怖い先輩と一緒に勤めるのか。しかも大変だと評判の部署…」と思いましたが、1年経てば、今までと同じように人間関係や信頼関係が築けるから大丈夫だろうと頑張ろうと思いました。
しかし、そんなに甘くはありませんでした。
人間関係の問題が解決できず泣く日々
初日、まともに挨拶もしてもらえず、怪しい雲行きを感じました。毎日、何をしてもことごとく厳しく叱責されました。気を使って動いたつもりでも、「余計なことをした」と怒られる。職場での会話は人の悪口ばかり。
気を使ったり、努力したり、今まで自分が人生でこれをしたら良いと信じていたもの、どれを試してみても効果はないどころか、逆効果に感じました。濡れ衣をきせられることも多々ありました。夜遅くからお説教が始まることも多く、長時間労働でもう弁解する体力もありませんでした。
こうした環境の中で時間が経てば経つほど、私の心はどんどん病んでいき、仕事帰りには何時間も車の中で泣く日々でした。「もうこの職場を離れるしかない」と思いましたが、まだ日が浅く、異動の希望も出せません。このまま結婚するか、産休に入れば…と思いましたが、適齢期なのに彼氏もいない。人生お先真っ暗で、八方ふさがりとはこのことだと思い、どこにも光も希望も見えない状況でした。
ずっと真面目に生きてきたのに、必死に頑張って仕事してきたのに、なんでこんな目にあうんだろう…楽しそうに仕事をしている同じ看護師の友人を見ては、私も違う病院に勤めていたら人生違ったのに…と友人に会うのも苦しくなっていきました。転職も考えましたが、新しい病院で勤められる自信もすっかりなくなっていました。私なんてどこに行っても無理だろうと思いました。また、地元でも有名な病院で、両親もとても喜んでくれていたので、そこを辞めるなんて言い出せませんでした。
問題の解決は意外なところにあった
人に相談もしましたが、「まだ大丈夫でしょ?」と言われるばかり。カウンセリングにも行き、そのときは楽になったように思いましたが、一時的な回復でしかありませんでした。
ばんそうこう一枚貼ることも、コピーをとることも、内線をとることも、そんなささいなこと全てが怖くなり、毎日、生きた心地がしませんでした。帰りの車の中では、いつもこのままトラックが突っ込んできて、死ねないかな…と思っていました。
こうして仕事場での人間関係の悩みが限界に達したとき、知人の紹介で心の学校を知りました。
これで自分自身も人間関係もよくならなかったら最後と、藁をもすがる思いでセミナーを受けました。すると、いじめられていると思っていた上司のとらえ方が一変しました。
厳しかったのは、私のことを思ってくれていたからだったんだ、私のことを信頼して、期待してくれていたからこそ、厳しくしてくれていたんだ。また、命を預かる難しい仕事だからこそ、私が将来困ることがないように、たくさんのことを教えようとしてくれていたんだ。誰よりも患者さんのことも病院のことも、そして私のことも思っている、優しい方だったんだと気づきました。
そして私も、上司のことを恨んでいると思っていたけど、本当は上司が大好きだった。本当は尊敬していて、大好きで、上司に認めてほしかったから苦しかったんだと自分の本心にも気づくことができました。
上司の深い愛情、自分の本心に気づいてからは、表面的な言葉ではなく、その背後にある思いを察することができるようになりました。
そして、上司は恨んでいた人から、大恩人になりました。
上司を悪く見ていたのは自分自身
セミナー後、その上司にお会いすると、上司は仏様のような優しい顔になっていました。いえ、なっていたのではなく、上司はもともと仏様のように優しい人だったんだと思います。何か指導をいただく度に、自分が自分のことを強烈に責めていました。自分が自分を責める声ばかりを聞いていて、上司の本当の思いを聞いていなかったのだと思います。そして、上司の仏様のような優しい姿を見れていなかったのだと思います。セミナーで感じた感謝の気持ちも上司に伝えることができ、照れくさそうに笑ってくれました。
上司に感謝を伝えることができてからというもの、上司との関係は良好になりました。同僚や他の先輩からも「あなたがいてくれて助かるって言っていたよ」「あなたはすごくできる人だって言ってたよ」と言ってもらえるようになりました。
結局、その1年後に、私はセミナー直後に再会した方と結婚し、寿退職することになりました。
ここまで育てていただいたのに、退職することになって申し訳ないと思いましたが、上司はとても喜んでくれて、サプライズでお祝いもしてくれました。
そして今、本当に素敵で大好きな方々に囲まれて、新たに好きな仕事を始めることができています。以前は仕事は苦しいものと思っていましたが、不思議なほどに楽しく仕事ができています。もちろん、新しい職場でも、人間関係が悩みになることはありません。
自分自身を責めるのではなく武器に
こんな日が来るとは、あのときは夢にも思いませんでした。本当に人生のどん底の真っ暗闇にいるような気持ちでしたが、今の私に導いてくれた大切な出来事になりました。それまでの私は、何があっても、何が起きても、自分を責めていました。自分のことをいじめていたのは、他の誰でもない、自分自身でした。
今もまだ、自分のことを責めてしまうこともありますが、自分自身の存在を否定するのではなく、それも自分の武器だと思えるようになりました。
そして周囲の方々の、表面的な表情や言葉ではない思いを察するようになりました。自然と笑顔になって、人と関わることが以前よりも楽しくなり、かわいがってもらえるようになりました。こんなに恵まれていていいのかなと感じるぐらいです。
以上が転職した時の私の体験談です。
このように、怒られる、怖い、と表面上だけを捉えていた私。でも、その奥には優しさに溢れていた上司の姿が。そんな上司の姿に気づけていなければ、辛いだけの記憶だったかもしれませんが、相手の言動に対しての、自分自身の「捉え方」を変えたことによって人間関係が180度変わりました。
もしかしたら、読んでいるあなたの悩みも、私とおなじように、苦しみの原因が分かれば、解決できるかもしれません。
今現在、お悩み中の誰かの参考になれば幸いです。